入江悠さんトークショー

2012年11月7日(水)『アギーレ 神の怒り』上映前
入江悠さんトーク 概略

ヘルツォークを知ったのは映画を勉強していた大学生の頃で、「フィツカラルド」とか「ノスフェラトゥ」あたりだったと思いますが、当時は面白いと思わなかった。年を経て見た時にすごいなと思うようになりました。
ヘルツォーク監督は狂っていますよね。無謀なことが好きじゃないですか。主人公がヘルツォークとだぶって見える。周囲にいられたら迷惑で、同じコミュニティにいてほしくないタイプ。でも、段々愛おしくなって、魅力が浮き上がってくる。それがヘルツォークの魅力なのだろうと思っています。語弊があるかもしれませんが、ヘルツォークは雑な面があると思う。事態が突然起きて、それがなんだったかという説明せずに終わるという荒っぽさをある日ふと、これはすごいな、と思うようになりました。ヘルツォークの映画には説明がない。人の心をざわざわさせる感じが強い。ある種の人々にとっては苛立たされると思う。でも一旦その世界に入ってしまうとすごく心地いい。こちらの映画体験だったり、人生だったりを映画側が試してくるような感じ。

若い時に乗れなかったというのは、イライラさせられたからだと思う。客に対してボンボン投げつけてくるというか。登場人物のやっていることが正しいのか間違っているのか、映画は説明をしてくれないですから、それが大人になると、世の中というのはそういうもんだという認識が生まれてくるのですけど、若い時にはそれがわからなかったんでしょうね。

作り手としては、「アギーレ」なんかはやりたくないことばっかりやっていますからね。川の撮り方ひとつにしても、川の中にカメラが筏と共にあり、カメラが水の中で揺れる。その時に川の水面を見るとどれくらい大変かと言うのが分かる。世界でトップクラスに大変な川の撮影だったと思いますよ。それに、ドキュメンタリー的な撮り方をしているので、かなり優秀な撮影スタッフだろうなと思います。よく逃げ出さなかったと。

「アギーレ」は冒頭からすごいですし、色々すごいシーンはありますけど、この川のシーンが一番きついと思う。川は流されたら一度下まで行かなくてはいけない。あるポイントにこだわったらまたそこまで戻らなくてはいけない。そういう意味でもかなり手間がかかっていると思う。日本だと黒澤明監督がこういうことしていたと思う。最近では木村大作さんくらいかな、と。時代的に難しいんですよね。

映画が持っている不良性というか行儀の悪さ、東映のやくざ映画とか好きなのですけど、段々そういうのは失われて、優等生的になっていっていると思う。そういう失われていくものがすごく詰まっている。いつか自分でもそういうものを撮りたいと思っています。

広告